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ネムリヒメ.
第21章 あの夜の王子様.
ウ…ソ……知らない…
言葉を詰まらせたまま、息をするのも忘れてしまいそうになる
すると…
「ちぃ……」
雅くんが目を見開いたまま固まるアタシの髪に手を差し込んで、優しく名前を呼んだ
「ッ…」
聴いたことのない甘い声…
見たことのない堪らなく色っぽい表情…
さっき、出掛けに女の子たちを悩殺したあれは演技だとして…
戸惑いのなか、実際に目の当たりにした彼の姿は、アタシの弱った心臓を破るには充分すぎる破壊力を持ち合わせていた
ドクドクと激しく心臓が脈打つなか、
掻き抱くように後頭部に回された手を引かれ、彼の端整な顔が間近に迫る
「っ…待っ…て…」
「ん…!?」
その傷…本当にアタシが……
あの日、アタシと雅くん
なにがあったの…
だけど、混乱と戸惑いで真っ白に飛んだ頭では、そう言うのが精一杯で…
妖美に細められた瞳に飲み込まれそうになりながらも、なぜか込み上げてくる涙に顔を背けた
しかし…
「顔…あげろよ」
「っ……」
アタシの頬を包み込む大きな手がクイッと顎を持ち上げる
雅くんを見つめたまま、滴がふたつ…頬を伝い落ちた
その涙の意味はよくわからないけれど、少なからず色々なショックが入り交じっているのは確かで…
「みや…び…く……」
彼の名を呼ぶ声も震えてしまう
「その顔…あいつらにも見せてんのかよ」
そんな呟きと同時に、震える唇に押し当てられた柔らかな感触…