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ネムリヒメ.
第22章 あの夜の…….
─それから10分後…
雅は痛む腹部を押さえながら屋外のプールサイドにいた
げほげほと咳き込む度、肋骨に響く痛みに軽く顔を歪める
「……っ…ク、ソ…」
その理由は無論、葵にお見舞いされた2発の強烈なミドルキック…
ではなく、部屋を出る寸前に渚に食らわされた右フックだった
"蹴り2発ならまだ余裕で動けんだろ"
"別に大したことねぇ…"
大したことねぇ…って、そういう意味じゃねぇっつーの
床からフラッと立ち上がった所で鍛えあげられた腹部にめり込んだ渚の渾身の一発
その風采からは想像もできない強烈な一撃は、動けなくなるような急所をわざと外し、痛みだけを刻み込むという確実に計算されたもの…
不意討ちに悶絶する自分に向けられた渚の瞳は酷薄な色に染まり、その瞳の奥に宿っていたのは明らかな怒気だった
"お前は思い当たる所を捜せ…必ず見つけろよ"
そう言い残して部屋を出ていく渚の殺気と、千隼のカラダから香ったのと同じ香りが未だ鼻に奥で燻っている
「野…郎……つーか、アイツどこ行ったんだよ…」
当然と言えば当然だが、3人に目の敵にされた雅は若干苛立つ気持ちを抑えつつも、くまなく千隼の姿を捜す
そんな最中に思い浮かぶのは、自分の告白に衝撃を受け、言葉を失い、戸惑いを隠せない千隼の表情だった
しかし次の瞬間、それを打ち消すように脳裏を過る自分を求めて腕のなかで乱れよがる千隼の姿と甘い声
ゾクリと突き上げてくる感覚に思わず頭を振る