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ネムリヒメ.
第24章 Get back.
それは一瞬の出来事で…
あまりの音に空気が波打ち、衝撃を肌に感じる
目を見開いたまま動かない雅の前では白い硝煙があがり、空の薬莢が足元に転がり落ちてきた
轟かされた破裂音が未だに頭のなかに残っている
発砲は紛れもない事実…
しかし銃弾が貫いたのは自分ではないことに雅は驚きを隠せないでいる
─無傷だった。
…ギリギリのところで弾き出された弾の弾道が変わった
それを裏付けるように、どこかでガラスの割れるような音がしていた
「あ…オレのボトル…」
すると音の先を確認ながら、寸前のところで郁の腕を明後日の方向へ弾いた人物が思いきり苦笑う
それはテーブルに置かれたシャンパンのボトルが粉々になる音だったらしい
まだコルクも抜かれていなかったブラックボトルは無惨にも弾け飛び、滝のように流れ落ちた黄金色を絨毯が美味しくいただいている
「あれ…いいヤツだからちゃんと弁償してね」
「…あお…い」
そのオトコは奇しくも逝ってしまったボトルを惜みつつ、乱れた金髪をざっくり指で掻きあげる
雅の危機一髪の境地に割って入ったのは葵だった
「…にしてもみっくんカッコ悪い」
「なんで…ここに」
「ん!?そんなカラダじゃ郁くんに勝てないでしょ」
額に滲んだ冷や汗を拭いながら全身ボロボロの雅にそう笑ってみせる葵…
すると彼は少し間を置いてから表情を一変させ、
掴んだままけして離すことのない腕の方向へゆっくりと振り返った