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ネムリヒメ.
第24章  Get back.







「いらっしゃい、葵…」


そんな言葉の上でぶつかり合うふたつの視線…

振り返った葵を迎えたのは場にそぐわない郁の陽気な声だった


「…あのさ、もう少し意外そうな顔してくんない!?

せっかく期待を裏切ってきたのに、それじゃ格好つかないでしょ」

「あぁ…悪いな、気が利かなくて」


葵に腕をギリギリと捻りあげられながら不気味さを感じるくらいにっこりと笑って見せる郁

そんな郁に対して、葵の声や表情は普段の姿から考えられないほど冷酷なものだった

カジノで雅を蹴り飛ばした時ですら比にならない、ものすごい殺気が彼を取り巻いている


「穏やかじゃないね、葵。そんな怖い顔して…今日はいつものオンナたちはどうしたんだ」

「…それよりも」

「それとも…あんな数じゃ物足りなかったか…!?」

「ッ…!!」


そう口を開くなり、それまでの作り物のような笑顔から陰湿なものに笑みの色をガラリと変える郁

まるで、からくりの種明かしでもしてやろうかとでもいうような物言いに、葵の眉がぴくりとあがる


「あんまり寄るなよ、いろんなオンナの匂いがして吐きそうだ」

「………」


葵の着衣は人前を歩ける程度ではあったが所々乱れていた

黒シャツの襟もとのルージュにそこらじゅうにつけられたキスマーク

それにたくさんの香水の匂いもする

息を切らせて飛び込んできた彼のカラダには、彼女たちに揉みくちゃにされた様々な痕跡が残っていた






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