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ネムリヒメ.
第24章  Get back.





怯むことなく口を開いたこのオトコが、ワントーン声を落として残酷に頬笑む


「…そんな顔するならはじめからちゃんと手元においておけ。

わかってたろ!?あれからオレがこの子を欲しがってたの」

「だからって…」

「おいおい、今さら笑わせるなよ。

"手段は選ばない"…オレがそういうオトコだって、お前ら百も承知だろ」

「………!!」


その瞬間、葵のなかでいままで保ってきた何かが派手な音をたてて崩れた

それは床の上に崩れ落ちたままふたりのやり取りを朦朧と眺めることしかできないでいた雅にさえも伝わるほどで…


どんな取っ組みあいだろうが、誰とやり合おうが、絶対に葵は手技を使わない

どんな時ですら、絶対に蹴り技しか使わない


雅が息をのんだ瞬間、そんな葵の拳が風を切った


…それが何を意味するのか


「…葵っ!!」


"オレは絶対に足技しか使わないよ…"


─きっかけは何だったか覚えていない

それは葵とケンカでやり合ったあと、雅が初めて葵に飲めない酒を奢ってもらった時のことだ…

その時、互いになにを話したかだなんて今となってはまったく覚えていないけれど、葵が教えてくれたそれだけははっきりと覚えてる


彼がその手にどれだけの誇りを持ってどれほどのモノを生み出し、

今や名高い彼がその手の上にどれだけの努力を重ねてきたのか…


「ッ…ダメだ!!」


その理由も想いも姿もすべてを知っている雅は痛みも忘れ、そう衝動的に声を張りあげずにはいられなかった



…と、その時だった



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