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ネムリヒメ.
第24章  Get back.






そしてそのまま、口元を陰湿にニヤリと歪めた郁の視線が渚に返される


「でも、見たかったよ…

お前のその…余裕のない顔…」

「ッ…!!」


次の瞬間、

鈍い音をたてながら絨毯の細かいホコリが宙に舞った

屈んでいたはずの郁のカラダが背中から物凄い勢いで床に叩きつけらる

…渚の靴底が肩から仰向けに郁の上体を蹴り飛ばしていた


「黙れ、郁…」


そして起き上がる間も与えず、渚の持ち上げた右手が郁の頭上を掠める


…その時だった



────!!



部屋のなかに再び轟いた乾いた破裂音…


その音に部屋に存在するモノすべてが凍りつく


目の前で何が起きたんだろうか…

夢なんじゃないか…


誰しもがそう思っただろう

しかしそれを否定するかのように、絨毯を赤黒く染めて広がるモノが床に置かれていた雅の手に生温かい感覚を覚えさせた


「……!!」


真っ赤に染まる自分の手…

自分のモノではない他人の赤


ドクドクと動悸が鳴る

息を吸い込んだ胸がヒュッと変な音をたてる


恐る恐る顔をあげると、渚が下を見下ろして佇んでいた

その凶器のような眼差しに鳥肌がたつ

そして彼の手のなかにあったのもまた、凶器だった


動かなくなった郁を前に、手のなかから白い煙をあげたそれを絨毯に落とす渚…

音のない妙な静寂のなかに、床に転がされた鉄の塊が硬い音をたてた


その様子を雅はただ茫然と眺めることしかできなかった




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