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ネムリヒメ.
第24章 Get back.
荒い呼吸が落ち着かない
いまだに唇を割る甘く悩ましげな声に、今、ただでさえ保つのが厳しい心の平情を奪われそうになる
"─抱いて…"
白い羽のなかに横たわる彼女を見つけた時…
"─もっと、抱いて…"
そして、絨毯に転がった銃弾の空の薬莢とガラス瓶を見つけた時…
渚は電話越しに聞こえた銃声の意味をはっきりと理解した
─あの時には、もう…
「………ッ…」
思わず踏みつけたガラス瓶が、革靴の底に砕かれてミュートがかった短い悲鳴をあげた
その姿をひと目見れば、郁にどんな抱かれ方をされたかだなんて目に余るほどだった
"─ザンネン、ナギサ…
オマエナラ、タスケラレタノニ─"
床に倒されながら、そう自分を笑った郁の声が耳にこびりついて離れない
…電話越しの自分と郁との会話を彼女がどんな想いで聞いて
どんな想いで逆らえないほどの快楽に蹂躙されていったのかだなんて…
なにもかもが許されるなら、このオトコを殺してやりたかった
それ以上に、自分自身を呪い殺してやりたくなる
"─あの時、オレが…"
後悔なんていう言い訳はしたくない
だけど…ッ…
「ナギ…」
…そんな想いは雅も葵も同じだった
"─あの時、オレが…"
…泣かせなかったら
"─あの時、オレが…"
…その手をつかんでいたら