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ネムリヒメ.
第24章  Get back.






固い鎖の音が耳に痛い

時間が経つにつれ、赤く擦りむけた彼女の手首の痛々しさが増すばかりだ


「…ったく、手元にねぇならどこにあんだ…ッ!!」

「あー、ほらほら。そんな大きい声だしたら…ほら、これ飲みなよ」

「クッソ…どこまで陰湿なんッ…」

「ほら、あーん」

「んぐッ…!!」


暴れる勢いで郁に向かって声を荒ららげては顔を歪める雅を、その口に鎮痛剤を突込みながら宥める葵

多量の錠剤に続いて雅の口のなかに水を流し込みながら、隣で死人のように横たわる郁をひと蹴りしようともその瞼は閉じられたままだった


「起きろぉぉぉ!!」

「なあ…」


すると突然、郁を足蹴りする葵の隣で渚がぼんやりと声をあげる


「オレたちの絶対的な死角ってなんだと思う…」

「え…四角!?なに、もっかい言って」

「その四角じゃねぇ。…郁の範疇にあって、オレたちの目の届かない場所

…どこだと思う」

「あぁ、えっと…」


突然渚から出されたまるであるなしクイズのような問いかけ


「それって言い換えればオレたちが唯一、手を伸ばさない場所ってことでしょ…」

「………!!」


そうだ、手を伸ばさない場所

そう…

手を出さない…


「オトコの裸とか」

「あのなぁ…」


掴めそうで掴めない

なにかモヤモヤしたモノが頭のなかで渦を巻く

しかしそれは、極端だか強ち的外れでもなく…


もしくは、オレたちが手を出さない…

人間…ッ…!?




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