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ネムリヒメ.
第25章 Black Emperor.
「ひーちゃ…」
「感心しないなぁ…渚くんに飽き足らず望まで困らせるなんて…
おいたが過ぎて、さっき渚くんにおしりペンペンされたばっかりだっていうのに」
「……!!」
望を"のんちゃん"
聖を"ひーちゃん"
彼らをそんな愛称で呼ぶ彼女がいつも通り名前を口にし掛けたところで、それを遮る冷たい声
妖しく細められている形のいい丸アーモンド型の目と、その奥の瞳に宿る氷のような殺気に若葉の背筋がゾッとする
望にも増していつものヘラヘラした様子もみせず、天使のような笑顔もない
ただ、その様子から何かに怒りをかっているのはみてとれる
息を弾ませふたりの前に現れた人物…
それは、先程カジノを飛び出したばかりの聖だった
「…望、偉かったね。渚くんからのご褒美だよ」
「わぁい、いただきぃ♪ねぇねぇ、聖くんのはなに」
「…メープルシロップ」
「………あ、はは」
いつのか間にかテーブルに新しく置かれたミルクティの特大のグラスにはしゃぐ望をよそに、静まり返ったままの若葉
聖はそんな若葉をソファーに押しつけ制したまま、むせることなく一気に呷ったショットグラスの中身で喉を鳴らす
やがてグラスが戻されると聖からよりいっそう立ち込める甘い香り
聖は濡れた唇を手で拭うと、琥珀色の甘いシロップで汚れた指先を容赦なく若葉の口のなかへと突っ込んだ
「ねぇ…」
「んッ…うぅ!!」
「望の携帯切るほどそんなにふたりでいたかったとか、いつの間にオトコの趣味変わったの」