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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
耳もとに飾られた大粒のパールが、何事もなかったかのような顔をして穏やかな光沢を放っていた
これをつけてジュエリーショップの鏡の前に立たせた時に、驚いたような、少しはにかんだような表情で鏡のなかの自分を遠慮がち見上げた時の彼女の姿が鮮明に想い浮かぶ
それはたった数時間前のことなのに、とても手の届かない遠い昔のことのように思えた
「ッ…おねが…い」
「千隼…」
肌を掠めた吐息にさえ、膨れ上がった熱をもて余すようにピクリと肌を弾ませる彼女
「は…ぁ、雅…く…」
「…っ……」
悩ましげな声が雅の胸を締め付ける
ベッドが使いものにならなくなるほど乱されても未だに抑制することができない熱に、千隼のカラダが悲鳴をあげているのはよくわかる
有無を言わさず火をつけられ、無責任な快楽に蹂躙され…
郁から解放されても、鉄の鎖の拘束を解かれても、彼女のカラダは行き場のない熱に囚われたまま犯され続けている
それがどんなに切なくて、どんなに苦しいことだろうか…
「欲し…い…の」
─オレは…
楽にしてやるべきなのだろうか
いっそ…
彼女がそう望むなら
「……いて…」
─オレは…
「雅くん……抱いて…」
─あの…夜ように…