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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
「まあね…って白衣の女神をヘルスみたく言うんじゃないわよ。葵の頼みじゃなかったら来ないっての」
「あっははー♪そりゃどうも」
ええっと…
隣で悶絶する雅くんの背中をさすりながら、平然と葵くんの名前を口にするお姉さまにチラリと目を向ける
女性の年齢を述べるのは果てしなく抵抗はあるけれど、年の頃はアタシよりも遥かにお姉さま
そして雅くんはおろか、名前の上がった葵くんよりも実際は歳上かもしれない
それでも見た目はもちろんお綺麗で年齢をまったく感じさせないけれど、女性特有の空気というか、彼女の並みならぬ人生経験値の高さと色気がそう物語る
オトコの人は悩殺されるだけでまったくわからないかもしれない
だけど同姓のアタシにはよくわかる
いわゆるオンナの勘というやつだ
そんなところで
「貴女が千隼チャン!?」
「…!!」
長い睫毛のびっしり生え揃った彼女の瞳がアタシを捉え、艶のあるルージュが乗った唇がアタシの名前を唱える
「あ…、はい。はじめまして、結城千隼と申します」
「………」
雅くんや聖くんとのやり取りから見知った関係だということは一目瞭然につき、とっさにぎこちなくも頭を下げるものの
シャンパンの入ったグラスを片手に、ふーん…と上から下まで品定めをするかのように見下ろすお姉さま
こういう見られ方なんては初めてではないが、いつになっても慣れるものでもなく、ましてや居心地のいいものでもないのが正直なところだ