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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
さっきの冗談が冗談じゃなかったら…
扉の先に漂い始めた予期せぬ暗影は、その一歩が踏み出せなかったアタシの胸のうちを簡単に覆いつくしてしまう
葵くん、無事だよね…
なにもないよね…
ドクドクといった嫌な音が言い知れぬ不安を煽りながら血液と一緒に全身を駆け巡る
どうしようもなく嫌に胸が騒いだ
「……お前はオレと最後な」
「ひッ…!!」
思わず固唾を飲んだところで、不意に肩に触れた渚くんの手に驚くほど全身がビクリと跳ねた
「あ……、ゴメ…ン」
そのまま渚くんがアタシの肩を抱き寄せるけれど、
ッ…
─さっきと一緒だった
そこで再びカラダが思うように動かなくなっているのに気付く
どうしよう…
どうしよう……
何とか自分を奮い立たせようと拳に力を込める
けれど、覚えるのは作られた握り拳に力が入っているのかどうかわからない妙な感覚だった
「千隼!?」
どうしよう…
どうしよう……
そんなアタシを次第に襲うのは心地の悪い息苦しさだ
すると渚くんが硬直したまま立ち尽くしているアタシの顔を覗きこむ
そして、肩に触れていた手がポンと頭に落とされて…
「…お前は強いな」
え…
かけられたのは意外な言葉だった
アタシが…強…い…!?
…そんなわけないのに
あからさまに内心を覆すような彼の言葉に思わずきょとんとしてしまう