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ネムリヒメ.
第26章  夜明け.






「こんなの平気なわけないのにな…」


アタシを見た渚くんの瞳はとても深い色で揺れていた


「さっきからお前…震えてる自覚あるか?」

「…!!」


…あぁ、そうだよ

強くなんて…ない

ここにいるのは弱いアタシだ


「…なのに」


渚くんの表情がフッと緩められる


「自分の足でここに戻ってきた千隼は…いろんな意味で強いよ」


あ…

それは見るだけで安堵させてくれるような、優しく包み込んでくれるような笑みだった


だって…

そんな渚くんたちに会いたかったから…

ここにきたのは他に理由なんてない

誰でもない、渚くんたちに会いたかったからなんだよ


「………っ」


さっきまで空っぽだったはずの胸のなかは気づけばパンクしそうになっていた

伝えたいものの溢れる想いはギュっと締め付けられ苦しくなる喉の奥に貼り付いて声になることはない


だけど、彼のその笑みが、向けられる眼差しが

"そんなのわかってるよ…"と

言ってくれているように見えるのはアタシの都合のいい思い込みかもしれない

だけどそれでもいい


「いっくよー、せーのっ♪♪♪」


向き合わなきゃいけない気がするから


「…押すなよ、ぜってぇ押すなよ」

「わかってるってぇ♪」


このむこう側にある現実と…


「………………あはっ、たぶんね♪」


"オレはキミを知ってるし

 …キミもオレを知ってる"


あの夜無くしたモノに…


「ひじっ─!!!!!」


今なら戻れるけどアタシは行くよ…


─ガチャ…


…だって、ひとりじゃないから





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