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ネムリヒメ.
第26章  夜明け.





…葵…くん?


なぜかそこには、あれほど呼んでも応答のなかった彼の姿があった


「おっ帰りぃー」


拍子抜けするほど間の抜けた声でアタシたちを出迎えた葵くんに唖然とする一同…

誰もが驚きや戸惑いで言葉を見失う

だけど理由はそれだけではなかった

そこにあるのは紛れもなく美容師にしておくのが勿体ないほどの彼のいつもの笑顔だ

ずっと会いたかった葵くん…

アタシの手当てに一生のお願いを使ってくれた優しい彼の笑顔がすぐそこにある

数歩進んで手を伸ばせば届きそう

実際はもう少し距離があるけれど、そう思うのは彼だけまだ会えていなかったという気持ちの分だ


だけど何かがおかしい…

些細な違和感

そう感じたのは初めは気のせいかと思った


「あお、い…?」


しかし、それが自分だけの思い過ごしなどではないと証明されるのにそう時間はかからない

先頭で真っ先に彼と対峙した雅くんが怪訝な声をあげたのと、振り返らず正面を見据えたまま聖くんが後手でアタシたちの身動きを再び制したのはほぼ同じタイミングだった

それと同時に一番離れている渚くんの纏う気配までもが殺気立つ


「あぁ、瑠美チャン元気だった?」


そんな彼らの警戒を無視してなのかわざとなのか、包帯と絆創膏まみれの雅くんになんともなしに訪ねる葵くん


「あ、あぁ…相変わらずコンパ三…昧…」

「へぇ…そっか」


雅くんのぎこちない返事に相づちを打ちつつも、彼の視線の矛先は雅くんではなくアタシのほうへと向けられる





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