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ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
葵くん…
アタシの手首に巻かれた包帯からゆっくりと視線が滑らされて、葵くんとの視線がぶつかった
その瞬間、コンタクトじゃない彼の素の瞳がオシャレな黒淵の奥で凛と揺らぐ
距離がある分、互いに抱き合うように視線が絡み合うとゆるりと目尻が下げられて、彼の心から安堵するようなその表情にアタシは泣きそうになる
…しかし、
「ナギ、ゴメン…」
アタシを見たまま、突然そんな事を口走る葵くん
彼の視線は一旦は渚くんへと向けられて無言のまま何かを訴えると、すぐにアタシに舞い戻ってくる
"ゴメン"って…
「…それにちーちゃんも」
え…
葵くん、なに言ってるの?
変わらない彼の笑顔にこれほどになく胸が騒ぐ
─だけど答えはすぐにでた
「…っ、こないでっ!!」
へ…‼?
「ッ──!!」
笑顔から一変
突如、険しい表情に張り上げられる葵くんの鋭い声
そして、彼の長い脚が間合いを取らせるように前方で対峙していた雅くんの腹部を蹴り飛ばす
するとそれを合図にしたかのように、強く引かれるアタシの手
葵くんに飛ばされた雅くんはドミノのように、聖くんを後方へと弾き飛ばす
すべては一瞬…
なにがなんだか理解している時間なんてあるものか
しかし、
渚くんが庇うようにアタシを後ろに隠すと同じタイミングで…
─カチャリ…
その狭い空間に響かされた無機質な金属音が、まるでその混乱に楔を打ち込むようかのに鼓膜を貫いたのだった