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やらし恥ずかし夏休みバイト
第3章 桃の販売員
 7月下旬のある晴れた日の午後5時前、朱里は新たなバイトの初勤務のために、やや大きめの普通車を運転して駅前へとやってきた。
 傍らの助手席には、託された平たい段ボール箱が5つ積み重ねられている。
 箱の側面に「瑞桃園」という文字が書かれており、横に描かれた桃の絵からも想像できることだが、中には瑞々しい桃がぎっしり並んでいた。
 運転している車のドアにも同じ文字と絵が貼付されており、一目で「何か桃に関係する業者の車だな」と見てとれる。
 今回のバイトは、「桃の販売員」だ。
 夕方からの勤務にも関わらず日当2万円という、これまたあり得ないほどの高時給に心惹かれ、例によって「面接だけでも受けてみよう」という軽い気持ちで応募した朱里。
 そして、またしても採用となったというわけだ。
 瑞桃園というその会社は、主力商品である桃をはじめとする様々な果物を販売しているそうだった。

 業務内容は、「駅周辺にて、桃を数多く売りさばく」ということだ。
 朱里は夕方5時から夜9時までの担当で、この週は3日間出勤する予定となっている。
 勤務日ごとに桃が12個詰められた段ボール箱を5箱ずつ渡されて、もしその日のうちに完売に持ち込めた場合は、特別手当として3000円が支給されるという。
 また、「1箱以上」というノルマが課せられており、これをクリアできない時点で首になるということも聞いた。
 なかなか厳しそうだな、と思ったものの、高時給プラス特別手当に目がくらみ、挑戦する決心をした朱里。
 過去2回、痛い目に遭っている彼女だが、またも高時給の誘惑に屈したようだ。
 それに、「さすがにこの仕事内容なら、おかしなことも起こらないんじゃないかな」という淡い期待も、朱里の中にあった。


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