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淫らデッサンに疼く人妻
第6章 面接と実技
「あ、そんな……。その……近崎さんこそ、お気になさらず。私が悪いんですから……」
「いえ、茜さんは何も悪くないですよ」
「でも……。今後もし、このお仕事を続けるとすると、このことが心配なので……。今はただ、悩んでおります。せっかく合格をいただいたのに、こんなことを申し上げて、大変失礼で申し訳ないことだと分かっておりますが……」
 茜は、率直に本心を伝えた。
「そうですよね……」
 考え込む様子の近崎。
 数秒、間があって近崎が再び口を開いた。
「では、私の自宅のアトリエで練習されませんか? いきなり多人数の生徒さんの前で、となると戸惑われるでしょうし。もちろん、お給料は差し上げます。個人モデルということでお願いする格好ですね」
「え?」
 朱里はさっぱりイメージが湧かなかった。
「近崎さんのアトリエでは、他の方はいらっしゃらないのですか?」
「私は独身で一人暮らしでして。モデルさんに必ず事前に同意を得てから、弟子や友人を数名、同席させることもございますが、部屋が狭いため、描き手は最大で4名までということに決めております。もし、私ただ一人の前でしかモデルをしたくないとおっしゃるのであれば、それでも何ら支障はございません。ただ、慣れてこられて、『複数名の前でもかまわない』と思われたときには、お伝えくださいね。描き手が複数名のときは、カンパで資金を集めますので、通常よりも高いお代金をお支払いすることが可能ですよ」
「は、はぁ……」
 熱心に説明してくれる近崎だったが、茜には今ひとつピンとこない。
 それにまた、モデル料の多寡は、茜にとってさほど大きな問題ではなかった。
 美雪にとっては大きな問題かもしれないが。
 茜は、「そうは言っても、近崎さんに見られるだけで恥ずかしいんだけど」とか「独身男性のお宅に、人妻である私がお邪魔するなんて、絶対ダメ」とか、色々と内心思っていた。
 ただ、今日感じた解放感が大きかったのは、紛れもない事実だ。
 こんな感覚は、茜にとって初めてのもので、強烈な魅力を感じていた。
 なので、この場で断ってしまう勇気も、茜にはない。
 うつむき考え込む茜。
 その様子を見て、気持ちを汲み取り、近崎が言った。


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