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あたしに全部見せなさいっ!
第2章 紙とインクに発情中っ!
席にぽつんと残されたあたしは、描きかけのルーズリーフを前に、ため息をつく。
昔から、あたしの絵をとても好いてくれた詩織。多分一番のファンだ。同人誌を初めて描いた時も、真っ先に読んでくれたしネタの話も楽しそうに聞いてくれた。わざわざコミケにもきて、売るのを手伝ってくれたし。
そんな詩織だからこそ、萌えないの一言が、心に深く刺さる。
絵の続きを描く気にもなれなくて、顔しかまともに描いてないそれをぼんやりと眺めていた。
名前すらない男の子の頬っぺを、試しに鉛筆の先でつついてみる。もちろんぷにぷになんてしてるはずもなく、カツカツと硬い感触。
まあ、紙の下は机なので当たり前だけど。
ああ、これじゃあたし変な人だわ……。
ふいに顔をあげると、柚留と目があった。柚留があたしの方を見ている。
なんだろう、さっき詩織と見てた仕返しか? 詩織のように手を振って笑顔を向ける余裕は今の精神状態のあたしには無かったので、また絵に向き直ってため息をついた。
生々しさ、リアリティー、萌えない、男の研究。
詩織に言われた言葉たちを反芻する。結局昼休みはチャイムが鳴るまでそうしていた。