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あい、見えます。
第1章 見つめ合って
『あい、見えます。』
都会の歓楽街の一角。8階建のビルの7階に、その店がある。
Jazz Bar 『Dance』。
今日も、フロア直通のエレベータに、誰かが乗り込む。
■見つめ合って
夜中の3時半だ。
こんな時間に、自宅のドアに手をかけたまま固まる日がくるとは、生まれて40年、佐々木晋は想像したことが無かった。
恐らく、自分と見つめ合っている、隣室のドア前の女性も同じ思いだろう。
暗い廊下を仄かに包む灯りに照らされて、長い黒髪の女性は、立ち尽くしたまま佐々木を見つめて動きを止めていた。
何かを待っているようにも見える、その態度に、佐々木は軽く会釈をするが、彼女は瞬くこともせず、こちらを見つめ不安げな表情を浮かべている。
なんと声をかけるべきか迷った佐々木は、結局、「こんばんは。……お休みなさい」と静かに告げて、ドアの施錠を外し、自宅に入った。
革靴を脱いでリビングへ進もうとする耳に、少し遅れて隣の部屋の扉が開閉する音だけが聞こえた。
都会の歓楽街の一角。8階建のビルの7階に、その店がある。
Jazz Bar 『Dance』。
今日も、フロア直通のエレベータに、誰かが乗り込む。
■見つめ合って
夜中の3時半だ。
こんな時間に、自宅のドアに手をかけたまま固まる日がくるとは、生まれて40年、佐々木晋は想像したことが無かった。
恐らく、自分と見つめ合っている、隣室のドア前の女性も同じ思いだろう。
暗い廊下を仄かに包む灯りに照らされて、長い黒髪の女性は、立ち尽くしたまま佐々木を見つめて動きを止めていた。
何かを待っているようにも見える、その態度に、佐々木は軽く会釈をするが、彼女は瞬くこともせず、こちらを見つめ不安げな表情を浮かべている。
なんと声をかけるべきか迷った佐々木は、結局、「こんばんは。……お休みなさい」と静かに告げて、ドアの施錠を外し、自宅に入った。
革靴を脱いでリビングへ進もうとする耳に、少し遅れて隣の部屋の扉が開閉する音だけが聞こえた。