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あい、見えます。
第10章 見える世界
人が多くて提供待ちのオーダーが溜まっている時や、作るのに時間がかかるカクテルならば、フレアは弱め(簡単なジャグリング)で作るが、流石に、同じバーテンダーである佐々木は、抜け目なく客の人数を把握してから指示してきたようだ。


小さく笑いながらも、庵原は、珍しい来訪者の連れの為に、スクリュードライバーをスムーズに組み立てていく。

左手から右手へグラスを舞わせ、頭の後ろを通したそれに、トングで放り投げられた氷を涼し気な音と共に吸い込ませる。

そのままグラスをカウンターマットに置くと、既に反対の手はウォッカボトルを握り、背後から軽く投げ、反対の手で掴んだ2つのティンを、交互に宙へ放り投げた。

ボトルと、2つのカップを、お手玉のように空中で遊ばせると、片手でティンを重ねてキャッチし、ボトルの中身をティンに流し込む。

再びティンを崩して、片方を回転させると、動きの流れに任せグラスの中へウォッカを移し、オレンジジュースを氷を伝わせながら加えた。

バースプーンを手の中でクルクルと回してから、手首を返してステア(撹拌)すれば、切ったオレンジをグラスの端に添えて、ストローを刺し、完成だ。



店内に流れるJazzに合わせ、グラスやボトルをカウンターバーの中で自在に操る庵原に、離れた席の客が拍手をしているのが聞こえた。



だが、庵原は、それよりも、遥の視線の動きを気にしていた。

遥は庵原の手元で舞うボトルやティンには視線を向けていない。

コースターにグラスを置こうとして身を乗り出して、そこで初めて、カウンターの端にかけてある白い杖の取っ手に気付く。



もしや、と言いたげな顔で佐々木に視線を向けるが、彼は微笑むだけだ。



「佐々木さんは、何を飲まれますか?」

「キールで。フレアはいい」

「……はい」



過度な詮索はしない。

それが、バーテンダーの心得だ。

例え同じ職場の人間であっても、今は佐々木は客だ。



それでも、佐々木のオーダーしたカクテルが、一つのメッセージを庵原に届けている。

”キール”というカクテルに込められた言葉。

それが”最高の巡り合い”を意味すると、庵原と佐々木だけは理解している。



無言で冷蔵庫を開ける庵原の耳に、二人の会話が聞こえた。


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