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第8章 見せて、触れて

飲み込みきれない唾液が、口の端から溢れかける。


必死に飲み込んでいるはずなのに、甘く美味しい果実を口に含まされたように、後から後から唾液が溢れてくる。


「……ふ…」


とうとう口端に溢れた唾液がトロリと線を描いた頃、漸く唇を離した佐々木は、遥の顎にキスをした。


「あ……」


音を立てて、喉元にも、鎖骨にもキスをされる。


「ん……」


唇で触れられる度に、身体中がゾクゾクして、声が抑えられない。


背中に回していたはずの右手が、力なくシーツに落ちると、その手も持ち上げられて、指先に熱っぽい吐息を感じた。


「……ぁ」


声が漏れた時には、指先に口付けられていた。


指の先端を、１本ずつ濡れた唇で食まれ、その度に、キスされた場所は熱くなり、直後、離れる唇に、濡れた部分がヒヤリと空気に冷える。


熱さと冷たさの繰り返しに、身体がフワフワと酔っていく。


最後に小指の先に吸い付いてから離れた唇は、そのまま右の掌に押し当てられ、軽く吸い付いてから、舌先で擽ってくる。


ゆっくり与えられる唇の感触に、気付けば目元が濡れていた。


「遥さん…」


右の手首にキスが寄り添ってから、ふと、佐々木の心配そうな声が響いた。


「大丈夫ですか？」


優しく手が離れたかと思うと、目尻に指先が触れた。


その動きで、太腿に佐々木の剥き出しの膝が触れた。


ベッドが揺れて、頬に唇を押し当てられる。


裸の胸同士が一瞬、熱く触れた。


「大丈夫、です」


薄っすらと微笑む気配を感じ、離れかけた佐々木の首に触れたくて、右手を伸ばす。


指先が触れたのが、彼の耳だと気付いた時には、その手を滑らせて首の後ろへ左手も回していた。


両手を首の後ろに回されて、佐々木の動きが止まる。


「……」


少しの沈黙に、ドキドキしてたまらなくなる。


「あの―――」


「触れて、ください」


もっと、と続ける佐々木の囁き声は掠れていて、男らしかった。


（……あ）


離れかけた上体が近づくと、耳たぶに吸い付かれて、身体が跳ねた。


「そのまま。掴まっていて」


背中に手を入れられて、ゆっくり起こされる。


腰の後ろに枕を立たせられて、ベッドヘッドに寄りかかるように座らされた。


恥ずかしくなって閉じようとした足が、佐々木にぶつかった。