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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
     *

 繋がったまま貴博さんは身体を起こした。すると角度が変わり、当たる場所が変わったことで違う刺激に乱れた。なにをされても今の私には気持ちがよかった。
 貴博さんはブラウスを開き、身を屈めると素肌の部分に唇を這わせた。ちくりちくりと肌を掠める唇にキスマークがまた増えているのだなとぼんやりと思った。
 ぬちぬちと卑猥な音が耳を犯し、私の中から淫らな証が流れ出ているのが分かった。それは布団を濡らし、冷たくなっていく。
 貴博さんは私の身体を布団に倒し、片足を肩にかけ、さらに奥へとねじ込もうとしてきていた。すでに蕩けて敏感になっている中は貴博さんを奥まで誘っていた。
 このまま蕩けて貴博さんと一つになってしまいたいと願う自分と、そうなると貴博さんを感じられなくなるから嫌だと思う自分がいて、せめぎ合っていた。
「貴博さん」
「ん?」
「泣きそうなくらい気持ちがいいの」
 一つになっているのに、なんだか切なくて泣きたい気分だ。好きという気持ちがあふれすぎて、コントロールが効かない。
「貴博さん、好きです。大好きです」
 想いを口にすると、少しだけ切ない気持ちが薄らいだような気がした。
「俺も真白のこと、大好きだよ。愛してる」
 甘ったるい声で告げられた言葉は、何度も貴博さんの口から聞いた単語だけど、何回でも言って欲しかった。
「もっと言って」
 私のお願いに貴博さんは照れたように笑い、それから耳元で囁いてくれた。
「真白、愛してるよ」
 貴博さんにそう囁いてもらって、私を誘惑する貴博さんの甘い声が好きだということに気がついた。
 その声は、食事会の時にたまに聞いていた声。その甘ったるい声をもっと聞きたいと思っていたけれど、どこかで恥ずかしい気持ちも持っていた。
 こうして思い返すと、貴博さんはことあるごとに私を誘っていた。経験値がまったくない私にはそれの意味するところが分からなかった。
「貴博さんのその甘ったるい声、大好きです」
「真白を必死に誘惑しようとしているから」
「誘惑されっぱなしです」
 そう告げると、貴博さんは色っぽい流し目を私に向け、それから耳を喰みながら囁いた。
「真白、俺と結婚してください」
「……はい。愛しています、貴博さん」
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