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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
*
時間を聞けば、朝の九時ということだったので、お腹も空いていたし、朝ごはんを食べることにした。
寝室からキッチンに移動した。流しの中には食べ終わった食器が投げられていて、近くにはお弁当の空やビールの缶、おつまみが入っていたと思われる袋が散らかっているのを見て、さすが男一人暮らしだなと妙な感心をした。
これで綺麗に片付いていたら完璧人間過ぎてちょっと一緒に暮らすにはきついなと思ったけれど、昔、一度だけ行った兄の一人暮らしの部屋と変わらない様子にほっとした。
「いつもはもう少し片付いているんだ」
「そうなんですか?」
「……ごめん、嘘ついた。ちょっと見栄を張ってみた」
「ということは、いつもこんな感じ?」
「いや、いつもはもっとすごい」
そう言って月野木さんは流しの横に置いてあるゴミ袋をさした。どうやら私が寝ている間に片付けたらしい。
「そんなの白状しなくても」
「俺のことを少しでも知ってほしいから」
この人は本気らしいとその一言で分かったけれど、不思議と引かなかった。
一生懸命なアピールにちょっとかわいいと思ったけど、本人には言わない方がよいだろう。
「職場は綺麗に片付いているから、家もそうだとばかり思っていました」
「職場はパブリックスペースだからね。ここはプライベートスペースだから」
「でも、寝室は綺麗でしたよ?」
「あそこは寝るためのスペースだから、綺麗にしている」
その区別の差がよく分からなかったけれど、片付けられない訳ではなくて、面倒だから片付けていないっぽいというのはなんとなく分かった。
「真白はコーヒーを飲む?」
「いえ」
「インスタントのスープでいいか? あ、味噌汁もあるけど。……インスタントだけど」
「味噌汁がいいです」
「あぁ、飲んだ次の日だから、しじみがいいか? インスタントだけどあるんだ」
そう言って、月野木さんは電気ケトルに水を入れてお湯を沸かし始めた。
「真白はそこのソファに座って、テレビでも見て待っていて」
「え……」
「そのうち、なんか作ってもらうから」
「なんで作らないといけないんですか!」
「結婚してとプロポーズしたけど、そういえば料理の腕前は知らなかったなと思ったから」
「私、簡単なものしか作れませんよ」
「充分だ」
時間を聞けば、朝の九時ということだったので、お腹も空いていたし、朝ごはんを食べることにした。
寝室からキッチンに移動した。流しの中には食べ終わった食器が投げられていて、近くにはお弁当の空やビールの缶、おつまみが入っていたと思われる袋が散らかっているのを見て、さすが男一人暮らしだなと妙な感心をした。
これで綺麗に片付いていたら完璧人間過ぎてちょっと一緒に暮らすにはきついなと思ったけれど、昔、一度だけ行った兄の一人暮らしの部屋と変わらない様子にほっとした。
「いつもはもう少し片付いているんだ」
「そうなんですか?」
「……ごめん、嘘ついた。ちょっと見栄を張ってみた」
「ということは、いつもこんな感じ?」
「いや、いつもはもっとすごい」
そう言って月野木さんは流しの横に置いてあるゴミ袋をさした。どうやら私が寝ている間に片付けたらしい。
「そんなの白状しなくても」
「俺のことを少しでも知ってほしいから」
この人は本気らしいとその一言で分かったけれど、不思議と引かなかった。
一生懸命なアピールにちょっとかわいいと思ったけど、本人には言わない方がよいだろう。
「職場は綺麗に片付いているから、家もそうだとばかり思っていました」
「職場はパブリックスペースだからね。ここはプライベートスペースだから」
「でも、寝室は綺麗でしたよ?」
「あそこは寝るためのスペースだから、綺麗にしている」
その区別の差がよく分からなかったけれど、片付けられない訳ではなくて、面倒だから片付けていないっぽいというのはなんとなく分かった。
「真白はコーヒーを飲む?」
「いえ」
「インスタントのスープでいいか? あ、味噌汁もあるけど。……インスタントだけど」
「味噌汁がいいです」
「あぁ、飲んだ次の日だから、しじみがいいか? インスタントだけどあるんだ」
そう言って、月野木さんは電気ケトルに水を入れてお湯を沸かし始めた。
「真白はそこのソファに座って、テレビでも見て待っていて」
「え……」
「そのうち、なんか作ってもらうから」
「なんで作らないといけないんですか!」
「結婚してとプロポーズしたけど、そういえば料理の腕前は知らなかったなと思ったから」
「私、簡単なものしか作れませんよ」
「充分だ」