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テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
「うちは兄二人はとっくに結婚してるし、二人とも披露宴をして、父がこりごりと言っていたからなあ」
「結婚式をするぐらいの貯金はあると思いますけど、でも……私はほんと、身内だけで充分だと思っています。友だちは二次会で呼べばいいと思っています」
「結婚を考えてなかったという割にはやけに具体的なプランだな」
「え……いや、そのっ。友だちでそういう人がいたからっ」
 しどろもどろで返すと、貴博さんはおかしそうに笑った。どうやら意地悪をされたらしい。
「式に関しては両家に相談、と。さて、次」
 貴博さんは板に盛られた刺身を口にして、それからお酒を飲んでいた。それがすごく美味しそうで、私も同じように食べてみた。
「……美味しい!」
 生魚のほどよく乗った脂が口の中に広がったタイミングで熱燗を流し込むと、いい感じで口の中で混ざってさっぱりとさせてくれる。熱燗ってちょっと苦手だったけれど、寒い季節にちょうどよいし、このお酒ならばそれほど匂いがきつくないから飲みにくいってことがない。油断するとするする飲んでしまいそうになるので危険だ。
 刺身の後は焼き物、煮物と魚が次から次へと出てくる。揚げたてのワカサギの天ぷらが出てきた時には思わず歓声を上げていた。これがまた、熱燗に合うのだ。
「冷や酒もいいですけど、熱燗もいいですね!」
「真白ならそうやって喜んでくれると思っていたよ」
 貴博さんの嬉しそうな表情に、私も釣られて笑っていた。
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