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テンプテーション【完結】
第3章 囲い込まれる野良猫
安堵したような声に苦笑してしまう。貴博さんは甘えっ子だなと思う。
「朝ご飯を作ろうかと思いまして」
「あぁ、なるほど。冷蔵庫、なにも入ってなかっただろう?」
「はい」
貴博さんは伸びをしながらあくびをして、それから黒い髪の毛を手ぐしで整えつつ歩いてきた。途中でテーブルの上に置いていた眼鏡をかけると、いつもと変わらない貴博さんだった。
「一人暮らしを始めた頃、自炊をしてみようとしたんだ」
「そうだったんですか」
「道具は一式、揃えたんだ。流しの下や真白が今、手に掛けてる扉の内側にしまってある」
そう言われて、私は扉を開いてみた。
「う……わぁ」
そこは、冷蔵庫と打って変わってたくさんの物があふれていた。とはいっても、それなりに整然と並べられているから一目でなにが入っているのか分かる。
棚は天井まであるけれど、目線から下のすぐに手の届くところにはインスタントスープやレトルト食品、インスタントラーメン、パックのご飯などが置かれていた。上に目を転じると、調理器具が入っているらしいというのが分かった。天井近くはこの位置からだとよく見えない。
「でも、今までやったことないからどうすればいいのか全く分からなくて、すぐに諦めた」
「それでここに片付けてあると?」
「そう」
なんというか、もったいない。
「気合いを入れて買ったのに、使わないのはもったいないよなあ」
「ほんとですよ」
私の突っ込みに貴博さんは、ははっと乾いた笑いを返してきた。
「手厳しいな」
「厳しくないです。私だって慣れないながらもそこそこ自炊はしてましたよ」
「じゃあ、真白に期待」
「しないでください」
「朝ご飯を作ろうかと思いまして」
「あぁ、なるほど。冷蔵庫、なにも入ってなかっただろう?」
「はい」
貴博さんは伸びをしながらあくびをして、それから黒い髪の毛を手ぐしで整えつつ歩いてきた。途中でテーブルの上に置いていた眼鏡をかけると、いつもと変わらない貴博さんだった。
「一人暮らしを始めた頃、自炊をしてみようとしたんだ」
「そうだったんですか」
「道具は一式、揃えたんだ。流しの下や真白が今、手に掛けてる扉の内側にしまってある」
そう言われて、私は扉を開いてみた。
「う……わぁ」
そこは、冷蔵庫と打って変わってたくさんの物があふれていた。とはいっても、それなりに整然と並べられているから一目でなにが入っているのか分かる。
棚は天井まであるけれど、目線から下のすぐに手の届くところにはインスタントスープやレトルト食品、インスタントラーメン、パックのご飯などが置かれていた。上に目を転じると、調理器具が入っているらしいというのが分かった。天井近くはこの位置からだとよく見えない。
「でも、今までやったことないからどうすればいいのか全く分からなくて、すぐに諦めた」
「それでここに片付けてあると?」
「そう」
なんというか、もったいない。
「気合いを入れて買ったのに、使わないのはもったいないよなあ」
「ほんとですよ」
私の突っ込みに貴博さんは、ははっと乾いた笑いを返してきた。
「手厳しいな」
「厳しくないです。私だって慣れないながらもそこそこ自炊はしてましたよ」
「じゃあ、真白に期待」
「しないでください」