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忘れられる、キスを
第14章 無意識
「今度は先輩のリクエストでいいですよ」

ホットドッグをようやく食べ終えて、園内の地図をテーブルに広げる。
食べたばっかりだし、激しいのはなー…と言いながら先輩が覗き込む。
今ここだから…と地図をたどる先輩の指が、地図の丁度真ん中の辺りでピタリと止まる。

「観覧車…乗ったことないな…」
「まじすか?遊園地じゃ割と定番なのに」
「うーん…小さい時はあんまり高い所好きじゃなかったし、前にサークルの親睦会で来た時も人数多かったから乗らなかったなあ」

この遊園地のシンボルともなっている大観覧車は園内の真ん中にある。
ここからでも一番高い所にきたゴンドラが少し見える。

「じゃあ、初観覧車行きましょ」

立ち上がってから、はたと思いつく。
観覧車って、密室じゃん。
先輩はそのこと…分かってないんだろうな…
こんなこと気にしてるのは俺だけ。

ずっと、ただの、少しだけ他より仲のいい先輩と後輩の関係で。
その関係の心地良さを壊したくなくて、在学中からこの前のバレンタインに再会するまで、ずっとある程度の距離を保ってきた。
けれども、自分で引いていた線を、思ったよりも軽く越えてしまった。

隣に、もっと近くに、いたい。
手を取り、肌に触れ、繋がりたい。

そんな想いは日に日に募っている。

彼女への強い想いがまた暴走しないか心配で、俺の足取りが急に重くなった。


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