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忘れられる、キスを
第18章 期間限定
「どう?」
「ふぉいひいす」

ふわりと湯気の立つパスタを一口。
オリーブオイルの香りが鼻に抜ける。
食べながら喋らないの、と先輩が笑う。

「めっちゃおいしかった!また作って下さい!!」
「ん、またね。今度はニンニクいれよ」

あっという間に皿の上のパスタがなくなった。
ソースの残りまで綺麗にフォークで掬って食べると先輩は、作りがいがある、と嬉しそうに笑った。
皿をシンクに片付け、コーヒーカップを二つ持って戻る。
先輩はベッドに背をもたれさせながら、窓の外を覗いていた。

「雨、降ってきたみたい」

ありがとう、とカップを受け取って一口、口を付ける。
さっき、倉田先輩と重なった、薄い唇。
ともすれば触れてしまいそうで、その気持ちを誤魔化すようにコーヒーを飲んだ。

「熱っ…」

乾燥した唇にまだ熱いコーヒーが痛い。
大丈夫?と先輩がカップを置いて、こちらを見る。

こんなに近くにいるのに。
手を伸ばせば、抱きしめることも、キスをすることもできるのに。
どうして、心はこんなに遠いんだ。

ねえ、先輩。
どうしたら、もっと、近くにいられる?

伸ばした指先が先輩の肩に触れる。
ぴくりと揺れた細い肩。
そのまま抱き寄せ、そっと薄い唇に口付けた。




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