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忘れられる、キスを
第2章 泣き顔
自分では認めなかったけど、その時既にえっちゃん先輩のことをかなり好きになってたんだと思う。
けれど、先輩が、倉田先輩のことを好きなのは痛いほど分かったし、そこに入り込めるなんて、微塵も思わなかった。
えっちゃん先輩の卒業後も、連絡先は分かっていたけど、なんとなく、そのことが引っかかって、連絡出来ずじまいだった。
そして、瞬く間に自分の就活が始まろうとしていた2月。
その日はバレンタインデーに世間が浮き足立っていた。
図書館で自習を終え、カップルが増え始める前にそそくさと帰ろうとした時。
この日に全くそぐわない曲がきこえてきた。
甘く、優しく、そして切ない音。
これは…えっちゃん先輩の、ショパン…?
そう思ったら走り出していた。
目指す音は、サークル棟の最上階、あの、踊り場のピアノ。
そんな、まさか。
半信半疑でたどり着くと、常夜灯の下で、えっちゃん先輩がピアノを弾いていた。
思わず、初めて会った時を思い出す。
けれど、あの時みたいに愛しげな表情ではなく、ひどく、悲しげな顔で、目にいっぱい涙をためていた。
なんで。
どうして。
そんな表情。
心臓が、ぎゅっと締め付けられた。
けれど、先輩が、倉田先輩のことを好きなのは痛いほど分かったし、そこに入り込めるなんて、微塵も思わなかった。
えっちゃん先輩の卒業後も、連絡先は分かっていたけど、なんとなく、そのことが引っかかって、連絡出来ずじまいだった。
そして、瞬く間に自分の就活が始まろうとしていた2月。
その日はバレンタインデーに世間が浮き足立っていた。
図書館で自習を終え、カップルが増え始める前にそそくさと帰ろうとした時。
この日に全くそぐわない曲がきこえてきた。
甘く、優しく、そして切ない音。
これは…えっちゃん先輩の、ショパン…?
そう思ったら走り出していた。
目指す音は、サークル棟の最上階、あの、踊り場のピアノ。
そんな、まさか。
半信半疑でたどり着くと、常夜灯の下で、えっちゃん先輩がピアノを弾いていた。
思わず、初めて会った時を思い出す。
けれど、あの時みたいに愛しげな表情ではなく、ひどく、悲しげな顔で、目にいっぱい涙をためていた。
なんで。
どうして。
そんな表情。
心臓が、ぎゅっと締め付けられた。