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忘れられる、キスを
第22章 高揚
「そういうのあったから、こいつ、バイト先とか絶対に彼女に教えないらしくてさ。でも…」

店長がえっちゃん先輩を見て、優しく微笑む。

「君のことは、違うみたいだね。やっぱり本め…」

人聞きの悪いことを言われそうだったので、慌てて口を塞ぐ。
えっちゃん先輩はくすくす笑っていた。
それを見るだけで、心がほぐれていく。

「そういえば、名前は?えっちゃん?」
「ちょ…気安く呼ばないで下さい…」

じとっと見るが、店長は気にしない。

「深町、絵津子です」
「なるほど、それで、えっちゃんね。俺は店長の影山一星(かげやまいっせい)。よろしく」

ぎゅっと目を瞑るような、下手くそなウインクをする。
伊東さんとは似ても似つかない。

「こいつ、大変じゃない?こんな浮かれてるし、絵津子ちゃんに甘えまくってるんじゃないの?」
「な、な、何言ってくれちゃってるんですかっ」

先輩は、そんなことないですよ、と苦笑い。

「悪い奴じゃないけど、アホだから…まあ、何かあったら俺に言って」
「俺も、相談に乗るよ。こいつが嫌になったらいつでも相手になるから」

伊東さんも横から恐ろしいことをサラッと言う。

この人たち、絶対面白がってるな…

文句を言おうとしたとき、カランとドアベルが鳴り、新規客が入ってきた。

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