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忘れられる、キスを
第23章 スターライト
「リュウとはサークルが一緒だった、ってことは、絵津子ちゃんもピアノ弾けるの?」
入ってきたお客さんの対応で星くんがカウンターを離れると、コーヒーカップを拭きながら、影山さんが言った。
「はい…私はあまり上手じゃないですけど、星くんは…」
「これから、弾くよ、リュウ」
「え?」
影山さんが、ほら、と顎で示した先にはアップライトピアノ。
お客さんを席に案内してから、星くんはピアノの上に置いてある紙束を取った。
また、カラン、と音がして誰かが入ってくる。
「お、ボウズ、今日はいるな」
背広を着たサラリーマン風の男性二人組が、親しげに声をかける。
久しぶりだな、とピアノのそばに座っていた初老の男性も言って、椅子をピアノの方へと向けた。
「不定期なんだけど、弾いてくれんのよ、ピアノ。結構評判いいんだなこれが」
影山さんが嬉しそうに笑う。
星くんの演奏が聴きたくて来てくれるお客さんも多いらしい。
「先輩、好きなの、選んで」
いつの間にかカウンターの側にいた星くんが持っていた紙束を突き出す。
それは、楽譜だった。
何度もめくり、折れたり、鉛筆の書き込みで黒く汚れている。
「まずは、先輩のために、一曲」
そんなことを言われて、思わず顔が熱くなった。
入ってきたお客さんの対応で星くんがカウンターを離れると、コーヒーカップを拭きながら、影山さんが言った。
「はい…私はあまり上手じゃないですけど、星くんは…」
「これから、弾くよ、リュウ」
「え?」
影山さんが、ほら、と顎で示した先にはアップライトピアノ。
お客さんを席に案内してから、星くんはピアノの上に置いてある紙束を取った。
また、カラン、と音がして誰かが入ってくる。
「お、ボウズ、今日はいるな」
背広を着たサラリーマン風の男性二人組が、親しげに声をかける。
久しぶりだな、とピアノのそばに座っていた初老の男性も言って、椅子をピアノの方へと向けた。
「不定期なんだけど、弾いてくれんのよ、ピアノ。結構評判いいんだなこれが」
影山さんが嬉しそうに笑う。
星くんの演奏が聴きたくて来てくれるお客さんも多いらしい。
「先輩、好きなの、選んで」
いつの間にかカウンターの側にいた星くんが持っていた紙束を突き出す。
それは、楽譜だった。
何度もめくり、折れたり、鉛筆の書き込みで黒く汚れている。
「まずは、先輩のために、一曲」
そんなことを言われて、思わず顔が熱くなった。