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忘れられる、キスを
第23章 スターライト
星くんは挨拶をすることもなく、おもむろにピアノの前に座る。
楽譜を置いて、一呼吸つくと、鍵盤の上に指を乗せた。
呼吸をするような、自然な動作で音を紡ぎ出す。

私がリクエストしたのは、ドビュッシーの「夢」。
切なげな旋律が美しい、私の好きな曲。
星くんが差し出した楽譜にはポップスのピアノアレンジも多くあったが、私がよく弾くドビュッシーやショパンの楽譜もいくつか混ざっていた。
どれも、何度も練習をしたのか、くたびれて見えた。

「今日、あいつ、いい感じだね」

小さな声で伊東さんが言う。
星くんの演奏を聴くのは、卒業して以来なので、本当に久し振りだ。
演奏は、優しく、甘く、私の身体に響く。

「絵津子ちゃんがいるから、気合い入ってんな」

影山さんもそう言って、満足気に笑った。
曲に合わせて動く星くんの背中を見つめた。

「絵津子ちゃん、お酒、飲める?」

伊東さんがこっそりときく。
少しなら、と言うと、伊東さんはにっこり笑った。
曲が終わり、最後の音が消えると、ふっと空気が緩んだ。
甘い余韻に、ほう、とため息をつく人もいた。
遠慮がちな拍手が沸き起こる。
星くんは、その拍手に軽く礼をして、こちらをみた。

どうだった?

目が、唇が、私に問う。
良かったよ、と伝えるように大きく頷いた。


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