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忘れられる、キスを
第25章 お喋り
「えっと、何、話そう」

ふわり、とコーヒーの香りが部屋に漂う。
私たちは、ベッドの桟を背もたれに、並んで座った。

「じゃあ、先輩の好きな本の話」
「んー…推理小説かな…それ以外はあんまり…」

へえ、と星くんが意外そうな顔をする。
元々、お昼に再放送する刑事ドラマが好きだった。
そこから派生して、ミステリー系の小説を読むようになったのだが、それ以外ではあまり本は読まない。

「俺、あんまりそういうの読まないから、今度何かオススメ教えてください」

いいよ、と言うと星くんが嬉しそうに顔をくしゃっとさせる。
飲めるくらいに冷めたコーヒーを啜った。

「好きな色とか食べ物とかは?俺、意外と知らないかも」
「色…は、緑系かなあ。あんまりこだわりないけど…」
「あ、昨日も薄緑でしたね」

意味深な笑みを見せた星くんの鼻を摘まむ。
ごめんなさい、と慌てるので、離してあげた。

「甘いものは好きですよね。好き嫌いは?」
「んー…あんまりないけど…強いて言うなら、セロリ、かな…」

独特のスッとした苦味のような味が苦手だった。
星くんは?ときくと、何やら口の中でもごもご言っている。

「何?」
「……だから、ピーマン」

耳を紅くして子どもみたいなことを言う星くんは何だか可愛かった。

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