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忘れられる、キスを
第27章 不穏
「先輩のこと、色々知れて良かった」

月曜日の朝、出掛けに、星くんはにこにこしてそんなことを言った。
前日までの星くんとの色々な行為が思い出され、顔が熱くなる。

「じゃあ、お仕事頑張ってね、先輩」

駅での別れ際、ちゅっと耳にキスをして、反対側のホームへと去っていく。
呆然と立ち尽くしてしまった私は、危うく電車に乗り遅れるところだった。
電車に乗り、鞄から取り出した鏡を覗く。
うっすらと顔が紅いのは、チークのせいだけではない、と思う。

『耳、めっちゃ感じちゃうのも知ってる』

星くんはそう言って、耳を撫でたり、噛んだり、さっきのようにキスしたりして、私の反応を楽しんでいる。
どうにも、耳への刺激に過剰に反応してしまう。
そっと触れると、先程のキスを思い出してしまいそうになる。

「おはよう、深町」

電車を降り、会社に向かって歩く途中で後ろから声を掛けられた。

「早坂さん、おはようございます」

振り返って、挨拶をする。
おや、と早坂さんは、私の顔をまじまじと見つめた。

「何か、あったのか?」
「へ?な、なにも…」
「そうか?なんだか嬉しそうな顔してたから、朝から良いことでもあったのかと…」

良いこと、と言われ、星くんと過ごした週末と今朝を思い出してしまう。

やだ、私…
なんで、そんなこと思い出してるの…

顔が熱くなるのを感じ、慌てて話題を変えた。

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