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忘れられる、キスを
第35章 買い物
星くんと手を繋ぎ、数駅離れた所にある巨大なショッピングモールに来ていた。
日曜日ということもあり、家族連れやカップルで賑わっている。
私たちはぶらぶらと店を見て回った。

「あ、ここ、好きなんだ」
「へえ。ここ見る?」

私たちは綿素材の服を中心に扱う店に入った。
デザインは派手すぎず、シンプルな中に可愛らしい遊び心があり、私のお気に入りだった。

「星くんって、女の子のどんな服が好きなの?」
「えっ…あんまり気にしないけど。似合ってれば」

でも、と星くんが私の服の裾を引っ張る。

「こういうさらさらした素材とかふわふわしたスカートがいいよ、先輩、似合うし……」

そこまで言って、にやっとして耳元に口を近づけた。

「抱っこしたときに触り心地いいし」

顔が熱くなる。
どうして星くんはこんなことを恥ずかしげもなく言えるのだろうか。

「あ、これは?」

星くんが側のマネキンが着ているスカートを指す。
膝が隠れるくらいの長さで、ふわっとしていて軽い印象。
晴れた日の海みたいに真っ青だ。

「着てみなよ。似合うよ、きっと」

星くんが言うと、その言葉を待っていたかのように店員さんが現れ、試着室に案内される。
カーテンが閉められ、数分後。

「着れた?」

返事を待たず、星くんの頭だけがカーテンの間からひょこっとあらわれる。

「な、ば、ばかっ…!」

ぱちん、と乾いた音が試着室に響いた。
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