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忘れられる、キスを
第35章 買い物
「ごめんー…ごめんなさいー」

星くんが赤くなった頬をさすりながら、しきりに謝っている。

「かわいいスカートはいてるんだから、そんなむくれた顔してないでさ」

こんな顔にさせているのは誰だと言いたい。
星くんはむすっとしたままの私の背中を押し、鏡の前に立たせた。

「ほら、やっぱり、似合ってる」

私たちのやり取りを聞いていたのであろう、戸惑い顔だった店員さんも、お似合いですよ、とにこやかに言う。
改めて、鏡の中の自分を見つめる。
ふわりと広がる青いスカートは、暑い夏の日に涼やかに映えそうだ。
色の濃さも、綿素材の軽さで全く気にならない。

これを着て、星くんとどこかに出掛けたいな。

ふと、そんなことを思っていたら、鏡越しに目が合った。
にこっと笑いかけられ、とくんと心臓が鳴る。

「これ、にする」
「他のは?色々見なくていいの?」
「うん、星くんが選んでくれたから、いいの」

会計を済ませ、店を後にする。
ふと、星くんの顔を見上げると、まだ少し、赤みが残っている。

「ごめん、ね。叩いて…」

まあ、ちょっと、私も大人げなかったよね…

「や、俺が悪かったし…」

星くんもちょっとだけ気まずそうに言った。
けれどもすぐに、ぱっと表情を変えて振り返った。

「先輩、ちょっと行ってみたいとこあるんだ」
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