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忘れられる、キスを
第36章 温泉旅行
薄っすらと白濁するお湯に透ける、先輩の白い肢体。
それだけで、俺の身体は素直に反応した。

先輩が泣いて、俺を求めた夜、俺はそれに応えなかった。
求めのまま、応えることもできた。
けれども、あの怯えた先輩を、めちゃくちゃにしてしまいそうで、怖くなってしまった。

「キス、していい?」
「ん…」

小さく頷いてくれる。
良かった、怯えてない。
しきりに恥ずかしがってはいるが、俺と一緒にいることには、抵抗ないようだ。

肩から胸元にキスをして、それから抱きかかえて湯船の淵に座らせる。
さっと胸の前で腕を組み、身体を硬くさせる先輩に、そっとキスをする。
側に置いていたフェイスタオルを腿の上にかけた。

「星…くん、は、はずかし…」
「俺も、裸だし、恥ずかしいのは一緒」

ちがう、と先輩が呟いた。
俺の目は、先輩の臍の周りに釘付けになった。
真っ赤な痕が、いくつも散らばっている。

「くそ…」

苛々とした気持ちがせり上がってくる。
先輩の身体に残された、恐怖心と痕を全て消してやりたかった。

「ん…っ」
「くすぐったいの?」

柔らかな腹に舌を這わせると、ピクリと身体を震わせた。
時折、小さな声が漏れる。

「胸、見せて」

胸の前で組まれた腕に触れる。
ほんの少し、抵抗して、それからそっと、解かれた。
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