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忘れられる、キスを
第37章 露天風呂
身体を拭いて、素肌に浴衣を纏う。
乾かしてあげる、と星くんがドライヤーを当ててくれた。
人に髪を乾かしてもらうのも、気持ち良い。
交代で乾かして、部屋へと戻る。

「はい、水、飲んで」
「ありがとう」

冷たい水が心地よく喉をおり、身体に染みる。
時計を見ると、そろそろ十二時になるところだった。

「先輩、一緒に寝よ?」

星くんが、ぽんぽん、と白いシーツを叩く。
布団に入ると、ぱちり、と電気が消され、辺りは暗闇に包まれた。

「暑くないの?」
「ん、エアコン効いてるし。先輩と一緒に寝たい」

星くんが私を抱き寄せる。
足と足が絡んで、身動きが取れない。

「キス、はいい、でしょ?」

何度もするくせに、そうやって、確認する。
弱気なのか、強気なのか、よく分からない。

「お風呂上がりって、いい匂いするよね、ここ」

星くんが浴衣の前を少しだけはだけさせ、わたしの胸元に鼻先を押し付けた。

「ね、俺のこと、ぎゅって、して?」
「ん…」

甘えるような声でねだられて、広い背中に、腕を回す。
そっと頭を撫でていると、すうすうと、小さな寝息が聞こえてきた。

「星くん…?」

返事はない。

「いつもと、逆だね」

小さく呟いて、それから私もゆらゆらと眠りに落ちていった。
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