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忘れられる、キスを
第39章 ランチパーティー
早坂さんの家に入ると、リビングから飛び出してきた千代子さんに抱きしめられた。
ふわりと、いい香りが鼻をくすぐる。
きっと、私のことを早坂さんから聞いているのだろう。
心配そうな目をして、それでも何も聞かず、リビングへと通してくれた。
南側の明るい部屋の中央に置かれたテーブルには乗りきらないほどの料理が並べられていた。

「す、すごいですね」
「久しぶりに絵津子ちゃんが来るから、張りきっちゃった」

ワインもあるわよ、といたずらっぽく笑う。
料理上手の千代子さんだけあって、どれも美味しそうだ。
ふと、隣をみると、星くんは借りてきた猫のように、かしこまっている。

「二人の幸せな未来に、乾杯」

千代子さんの音頭で、チン、と小さな音が鳴る。
なんだか気恥ずかしくなってしまい、顔があげられない。

「で、星くんは、絵津子ちゃんのどんなところが好きなの?」

特製のローストビーフやマリネに舌鼓を打っていると、唐突に、千代子さんが言った。
むせこむ星くんのグラスにワインを足す。

「千代子、そういうのは」
「耕史さんは、絵津子ちゃんに話すことがあるんでしょう?」

だから、星くんはこっち、とワイングラスとオードブルの乗った皿を持って、テラスの方へ行ってしまった。
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