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忘れられる、キスを
第39章 ランチパーティー
多少、事情を知っている人もいるようだったが、私の一週間の休みは急な体調不良ということになっているらしかった。
佐野さんの突然の異動でばたばたしていたようで、私の動静を気にかけている余裕もなかったようだ。
職場復帰してからは、また毎日が慌ただしく過ぎて行くようになった。
忙しくしている分には、仕事のこと以外を考えることもなくて、心は穏やかだった。
少し早目の夏休みの後、星くんと私はまた週末に会うようになっていた。
最近は専ら、星くんがバイト終わりに私の家にやってきた。
「眠れないの?怖い夢でもみた?」
心は落ち着いて来ていたが、時折、どうしようもない恐怖に苛まれ、眠れないこともあった。
なかなか寝付けない私の頬に、星くんが触れる。
「…大丈夫」
「目、瞑って。寝るまでこうしてるから」
腕がのばされ、ぐっと抱きすくめられた。
髪を梳くように頭を撫で、小さな子どもを寝かしつけるように、とんとんと胸の上辺りを叩いてくれる。
温かな体温と、少し冷たい指先。
静かに身体に響く一定のリズムが心地よい。
「星くん」
一言、伝えたいことがあった。
上手く言葉にならなくて、もう一度、彼の名前を呼ぶ。
「何?もう寝なって」
「ん…おやすみ」
暗闇の中で、おやすみ、と声が返ってくる。
その声と、大きな安心に包まれて、私は深い眠りに落ちていった。
佐野さんの突然の異動でばたばたしていたようで、私の動静を気にかけている余裕もなかったようだ。
職場復帰してからは、また毎日が慌ただしく過ぎて行くようになった。
忙しくしている分には、仕事のこと以外を考えることもなくて、心は穏やかだった。
少し早目の夏休みの後、星くんと私はまた週末に会うようになっていた。
最近は専ら、星くんがバイト終わりに私の家にやってきた。
「眠れないの?怖い夢でもみた?」
心は落ち着いて来ていたが、時折、どうしようもない恐怖に苛まれ、眠れないこともあった。
なかなか寝付けない私の頬に、星くんが触れる。
「…大丈夫」
「目、瞑って。寝るまでこうしてるから」
腕がのばされ、ぐっと抱きすくめられた。
髪を梳くように頭を撫で、小さな子どもを寝かしつけるように、とんとんと胸の上辺りを叩いてくれる。
温かな体温と、少し冷たい指先。
静かに身体に響く一定のリズムが心地よい。
「星くん」
一言、伝えたいことがあった。
上手く言葉にならなくて、もう一度、彼の名前を呼ぶ。
「何?もう寝なって」
「ん…おやすみ」
暗闇の中で、おやすみ、と声が返ってくる。
その声と、大きな安心に包まれて、私は深い眠りに落ちていった。