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忘れられる、キスを
第5章 優しさ
『また、今度ね、深町さん』
『あ…倉田先輩…待って…!』

ふっと目が覚める。
暗い部屋。
ここは…?

視界が徐々にはっきりしてくる。
温かな何かが私を包む。
これって…人…?

「ほ、星…くん…?」

びっくりして、思わず声が出る。
星くんは私を抱きしめて眠っていた。
昨日のことを思い返す。
散々泣いて、星くんには迷惑をかけた。
流されるままに身体を重ねて…
と、そこまででぴたっと思考が止まる。

ああ、私、星くんを拒絶したんだ。

何度も何度もキスをして、身体中に痕を付けられて。
身体中を弄られて、それでも強く抵抗できなくて。
このまま、されたら、先輩のことも、どうでもよくなるかな…
一瞬、そんな風にも思った。
けれど、その、細い指が私の中へ入り込もうとした瞬間。
ものすごい恐怖感と、嫌悪感が私の中を駆け巡り、自分でもびっくりするくらい、強い拒絶の声が出た。

星くんの顔は蒼白だった。
多分、すごく自分を責めてた。

確かに、半分襲われてるようなもんだったけど。
でも、私にも隙はあって、そもそも、二十歳そこそこの男の子の部屋にノコノコついてくるなんて、そうなっても仕方ない。
なのに、私はただ泣くばかりで、星くんを責めた。

そして、どうしてこれが、倉田先輩ではないのだろう、と思ってしまう自分が、腹立たしかった。




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