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忘れられる、キスを
第44章 冷却
結局、もやもやしたまま、俺は倉田先輩と別れた。
十一月も終わりに近づいて、風がかなり冷たい。
首元が寒くて、思わずコートの前を合わせた。

えっちゃん先輩に借りてたマフラーがあればいいのに…

ため息をひとつ。
ケータイの画面にえっちゃん先輩の番号を表示する。

出てくれるかな…

最後に見た怯えた表情と、倉田先輩の言葉が交互に浮かんでくる。
かじかんできた指先で、通話ボタンを押した。
コール音が、一回、二回………

『……もしもし、星くん?』
「先輩?あの…………今どこ?」
『星くんの…アパートの前』

え?
俺の、アパート?

「な、なんで…」
『……星くんに、会えるかな、って…』

なにそれ。
そんな言い方、ズルい。
……可愛すぎ。

「あと30分くらいでつくから、駅の…コンビニで待ってて。絶対だよ?」

わざとぶっきらぼうな言い方をしてしまった。
緩んだ頬を叩く。
通話を切って、先を急ぐ。
やけに電車がノロノロと進むように感じた。
自宅の最寄り駅に着いて、扉が開くと同時に飛び出した。
階段を駆け上がる。

改札を転びそうになりながら抜け、出口のそばにあるコンビニに駆け込もうとしたところで、くんっと腕を引っ張られた。

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