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忘れられる、キスを
第48章 距離
クリスマスコンサートの後から、先輩の様子が何か変だ。
家にも入れてくれないし、会ってすらくれない。
何を聞いても、忙しい、の一点張りだ。
年末も知らないうちに実家に帰ってしまっていた。

「何か嫌われるようなことしたんだろ?」と、店長や伊東さんは呆れたように言っているが、俺に心当たりはない。
まあ、これまでのことを思い返すと嫌われても仕方ないことは何度もあったけど…。

「でもなー…」

思わず何度目かの独り言が零れる。

抱きしめることも、キスをすることも、許されていたはずだったのに。
どうして、今更。

考えても、何の答えも浮かばなかった。

「リュウ、なにぼやっとしてんだ、手を動かせ、手を!」

パントリーの奥から顔を出した店長の檄が飛ぶ。

今日は仕事納めだ。
新年を迎える前にバイト総出で店内の清掃に励む。
俺はもう一時間近く、店中の食器を磨いていた。

「ちょっと冷たくされたからってそうあからさまに落ち込むなよ、辛気臭い」
「そうっすよ、リュウさん、いっつも彼女にはもっとクールに振舞ってたじゃないですか」

伊東さんと洋祐がにやにやしながら言う。

「まあ、それも青春だ。が、その前に手を動かせ」

いつの間にか後ろに立っていた店長にばんっと尻を叩かれた。

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