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忘れられる、キスを
第48章 距離
「スターライト」での年内の仕事と忘年会が終わり、家に着いた頃には日付をまたいでいた。
疲れと酔いもあって、気付けば翌日の昼を過ぎていた。
怠い身体を起こし、シャワーを浴びる。
水を一杯飲んで、ようやくしゃっきりしてきた。

ふと携帯をチェックしてみたが、先輩からの連絡はない。
また、深いため息が出てしまう。
かと言って、これ以上しつこく連絡するのも気が引けて、テーブルに携帯を戻す。

「…掃除するか」

ひとりごちて、掃除機を出す。
元々そんなに物のある家ではないため、ゴミを捨て、物を所定の位置に戻せばあっという間に片付く。
天気はいいので、ベッドカバーとシーツも洗濯して、大掃除は完了だ。

シーツを取り替えたばかりのベッドに転がる。

本当なら、ここに、先輩がいたかもしれないのに。

そう思うとベッドがやけに広く感じた。
目をつむり、先輩の姿を想い起す。

ふわっとした笑顔、ガラス玉みたいな涙、眉をハの字にした困り顔、俺の腕の中でだけ見せる羞恥を孕んだ切なげな表情。

柔らかな肌の感触を思い出すだけで、ふっと体温が上がる。

なんなんだよほんと。
俺は中学生か?
ちょっと会えないくらいで、心も身体も、先輩を恋しがるなんて。

深いため息がでた。
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