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忘れられる、キスを
第50章 献呈
え、何…

咄嗟に反応出来ない。
柔らかいものが押し付けられている。

あれ、もしかして、これ。

キスをされた、と気付くのに大分時間がかかった。
時間にして、ほんの数秒。

そっと離され、細い銀の糸がふつりと切れた。

「星くん、あのね、私、星くんのこと、好きなの」

え?
好き?
誰が?

「この一年間、どんなときも側にいてくれて…ずっと、私のこと想ってくれて、本当にありがとう」

はにかんだように笑う先輩は、すごく、綺麗だ。

「今日の演奏、すごく…すごく良かった。星くんの気持ちにずっと応えられなくてごめんね…あのね、星くん…」

きゅ、俺の腕を掴んだ先輩の指先に、力がこもる。

「明日からも、ずっと、一緒にいて下さい」

あ、あれ…これって…えっと、つまり?

「………両想いってやつ?」

途端に先輩の顔が真っ赤になる。

何、いきなりカワイイ反応して。
さっきまで、ちょっと男前だったくせに。

「…めっちゃ嬉しい」

ぎゅっと抱き締め直す。
ふわりと甘く香る首筋に口付けた。

「避けられてたから…嫌われたのかと思ってた」
「………ちょっと、ヤキモチ…で、でも、そんな風に思ってること、星くんに知られたくなくて…」

なにそれ、かわいい…

ごめんなさい、と目を伏せた先輩に愛おしさが込み上げた。
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