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忘れられる、キスを
第50章 献呈
「嬉しい。えっちゃん先輩が、ヤキモチ妬いてくれてたなんて」

戸惑いの表情を見せる先輩に、そっとキスをする。

「これからは、先輩の思ってること、もっと何でも教えて?嬉しいことも、不安なことも、我慢しないで、全部、教えて?」

きゅっとまた、指先に力が入った。

「…すき……星くんのこと、大好き」

今度は引き寄せられて、唇が重なる。
唇と唇を合わせるだけの、単純なキス。
先輩の好きな、キスだ。

「俺も、好きだよ、先輩」

そのままベッドに押し倒し、また唇を重ねる。
何度も、何度も。
その感触を確かめるように。

「いっぱい、しよ?好きなだけ」

ん、と小さく頷いて、また唇が重なる。
先輩の目の端から、ぽろりと、硝子玉みたいな涙が零れた。

「泣いてる、の?」

指先で涙を掬う。

「何でかな…涙、出ちゃう…」

ぽろぽろと、零れ落ちる涙が止まらない。
先輩を抱き起こし、そのまま抱き締める。
静かな時間が続いた。

「嬉しかった」
「ん?」
「「献呈」も、ラヴェルも…星くんの音、独り占めしたみたいで…」

先輩が照れたように笑う。

「…案外、独占欲強いの、忘れてた」
「…………そう、かも…」
「認めるの?」

顔を覗き込むと、また困ったように眉を下げた。
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