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忘れられる、キスを
第5章 優しさ
結局、付き合う付き合わないの話はそこでうやむやになってしまった。
会計を済ませると、星くんはまた、来たときと同じように私の左手を取った。
私はやっぱり、握り返せない。
駅まで送りますよ、と言って最寄り駅まで手を繋いだまま来てしまった。
もう九時近くになっていたが、駅の構内も人が疎らだ。
そもそも、この駅の利用者の大部分は私たちの母校である大学の学生だ。
今は春休み中だから、そうそう朝早くからくる人もいない。
ホームに降りると、ちょうど電車は行ってしまったところらしく、十分後に次の電車がくるという案内が出ていた。
「先輩、俺のこと引っ叩いても良かったんですよ」
ふつーに考えて、犯罪だし…と昨日の夜のことを思い返すように星くんが言った。
「だ、大丈夫…だから。今回は……許す」
「ほ、ほんと…?嫌いになってない…?」
「なって、ない…てか、そんなんだったら、とっくに始発で帰ってるよ…」
そっかあ、そうだよね、よかったあ…と星くんは心底安心したような表情を見せた。
そんなに焦るならヤるなといいたかったが、私にも非はあるので、ぐっとこらえる。
そうこうしているうちに、電車が到着するアナウンスが流れた。
するり、と星くんが手を離す。
「じゃあ、先輩、今度は何もしないので、また会ってください」
屈託のない笑顔。
なんか、ほんと可愛くてちょっと癒される…
思わず私の表情も緩む。
ゴオオオという音と一緒に電車が滑り込んで来た。
「あ、これ、やっぱり俺が洗うので!」
電車に乗り込む私の背中に声をかける。
振り返って、視線の先には、昨晩私の着たパジャマとトランクスが入った紙袋。
前言撤回。
全然可愛くないし、癒されない。
文句を言おうとした所で無情にもドアが閉まった。
会計を済ませると、星くんはまた、来たときと同じように私の左手を取った。
私はやっぱり、握り返せない。
駅まで送りますよ、と言って最寄り駅まで手を繋いだまま来てしまった。
もう九時近くになっていたが、駅の構内も人が疎らだ。
そもそも、この駅の利用者の大部分は私たちの母校である大学の学生だ。
今は春休み中だから、そうそう朝早くからくる人もいない。
ホームに降りると、ちょうど電車は行ってしまったところらしく、十分後に次の電車がくるという案内が出ていた。
「先輩、俺のこと引っ叩いても良かったんですよ」
ふつーに考えて、犯罪だし…と昨日の夜のことを思い返すように星くんが言った。
「だ、大丈夫…だから。今回は……許す」
「ほ、ほんと…?嫌いになってない…?」
「なって、ない…てか、そんなんだったら、とっくに始発で帰ってるよ…」
そっかあ、そうだよね、よかったあ…と星くんは心底安心したような表情を見せた。
そんなに焦るならヤるなといいたかったが、私にも非はあるので、ぐっとこらえる。
そうこうしているうちに、電車が到着するアナウンスが流れた。
するり、と星くんが手を離す。
「じゃあ、先輩、今度は何もしないので、また会ってください」
屈託のない笑顔。
なんか、ほんと可愛くてちょっと癒される…
思わず私の表情も緩む。
ゴオオオという音と一緒に電車が滑り込んで来た。
「あ、これ、やっぱり俺が洗うので!」
電車に乗り込む私の背中に声をかける。
振り返って、視線の先には、昨晩私の着たパジャマとトランクスが入った紙袋。
前言撤回。
全然可愛くないし、癒されない。
文句を言おうとした所で無情にもドアが閉まった。