この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
忘れられる、キスを
第5章 優しさ
結局、付き合う付き合わないの話はそこでうやむやになってしまった。
会計を済ませると、星くんはまた、来たときと同じように私の左手を取った。
私はやっぱり、握り返せない。

駅まで送りますよ、と言って最寄り駅まで手を繋いだまま来てしまった。
もう九時近くになっていたが、駅の構内も人が疎らだ。
そもそも、この駅の利用者の大部分は私たちの母校である大学の学生だ。
今は春休み中だから、そうそう朝早くからくる人もいない。
ホームに降りると、ちょうど電車は行ってしまったところらしく、十分後に次の電車がくるという案内が出ていた。

「先輩、俺のこと引っ叩いても良かったんですよ」

ふつーに考えて、犯罪だし…と昨日の夜のことを思い返すように星くんが言った。

「だ、大丈夫…だから。今回は……許す」
「ほ、ほんと…?嫌いになってない…?」
「なって、ない…てか、そんなんだったら、とっくに始発で帰ってるよ…」

そっかあ、そうだよね、よかったあ…と星くんは心底安心したような表情を見せた。
そんなに焦るならヤるなといいたかったが、私にも非はあるので、ぐっとこらえる。

そうこうしているうちに、電車が到着するアナウンスが流れた。
するり、と星くんが手を離す。

「じゃあ、先輩、今度は何もしないので、また会ってください」

屈託のない笑顔。
なんか、ほんと可愛くてちょっと癒される…
思わず私の表情も緩む。

ゴオオオという音と一緒に電車が滑り込んで来た。

「あ、これ、やっぱり俺が洗うので!」

電車に乗り込む私の背中に声をかける。
振り返って、視線の先には、昨晩私の着たパジャマとトランクスが入った紙袋。

前言撤回。
全然可愛くないし、癒されない。

文句を言おうとした所で無情にもドアが閉まった。




/507ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ