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忘れられる、キスを
第50章 献呈
ふっと意識が戻る。
繋がりを解いていなかったことに気付き、慌てて身体を離した。

ゴムを処理してベッドに戻ると、先輩は小さな寝息を立てていた。
顔にかかったさらさらとした髪を掬う。

「…ん」

ちょっとだけ、と思って頬に口付けると、先輩がそっと目を開けた。

「ごめん、起こしちゃった」

ぼんやりとした意識が徐々に戻ってきたのか、はっとした顔になり、肌けた毛布をぱっと鼻の下まで引き上げた。

「あ、あ、あの…わたし…」
「ん?身体、平気?」

そっと頬に触れる。
平気、と小さな呟きが聞こえた。
ふと、時計を見ると、丁度日付けが変わった頃だった。

「今日からは、ちゃんと、恋人同士だね」

一緒に毛布に包まり、裸の先輩を抱き締める。
柔らかく、暖かい身体が心地良い。

「ね、星くん…」

どちらともなく唇は重なり、離れ、また重ねられる。

「ほんとに、好きだね、キス」
「……星くんとね、キスすると、すごく…すごく気持ち良くて、嫌なことも、苦しいことも、全部忘れられるの」

だから、好き、とはにかんだ表情が可愛らしい。

「俺も、好き」

そう言って、また、唇を重ねた。

辛い時、悲しい時、苦しい時。
いつでも側にいるから。
いっぱい頼って、いっぱい甘えて?
何度でもするよ。
貴方のために。

忘れられる、キスを。

Fin.
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