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忘れられる、キスを
第52章 DVD
「お、お邪魔しまーす…」

鍵を開け、そっと中に入る。
もうこれまで何度も来た部屋だったが、主不在の時に入るのは初めてだ。

星くんと「正式に」お付き合いを始めて、数ヶ月。
予定がなければ、専ら週末はどちらかの家で過ごすのが常だった。
研修期間が終わり、本格的に仕事の始まった星くんは、時折帰りが遅くなる。
それを見越してか、最近合鍵を預けられたのだ。

買ってきた食材をとりあえず冷蔵庫に入れる。
相変わらず自炊をあまりしないようで、冷蔵庫にはほとんど何も入っていない。

週末、夕飯を作るのと合わせて、一週間〜十日ほど持つようなおかず類も作り置きする。
忙しさにかまけて外食ばかりになってしまう、という星くんに頼まれたのだ。
これは恋人、というより母親っぽい気がするけど…
それでも、翌週、すっかり空になってきれいに洗われたタッパーの山を見るとちょっと嬉しくなってしまう。
そんなわけで、今日もせっせと星くんのリクエストに沿ったおかずを作っている。

外は来た時より風が強く、雨の音までしてきた。
今朝、家を出る前に見ていた天気予報では夜中から降る、と言っていたが、少し早めに降ってきたみたいだ。

私は天気予報を見ようと、ローテーブルの上に無造作に置かれたリモコンを操作した。
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