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忘れられる、キスを
第52章 DVD
「間一髪…ってとこか…」

丁度、アパート近くまで帰ってきたところで、雨足が強くなった。
あと一本遅い電車に乗っていたら、ずぶ濡れだっただろう。

「先輩、ただいまー」

ウキウキでドアを開ける。
今日は金曜日。
ドアを開ければ、キッチンで夕飯を作っている先輩が迎えてくれるはず、だった。

「あれ?」

玄関からすぐのキッチンには誰もいない。
料理をしていた形跡はある。

不審に思って部屋の扉を開けようとした所で、足が止まった。

『あっ、あんっ…!あ、あ…っ!』

聞こえてくるのは、呻き声…というか喘ぎ声…?

『あ、い、イイ…!んっあ…!イッちゃう〜あっ、だめぇ〜』

えっ、ちょっと、これ…!

ドアの隙間から部屋を覗き込むと、テレビ画面では、女の子がローターで自分を慰め、歓喜の声を上げていた。
その前に先輩が座り込んでいる。

えーっと…どういう状況だ…?
落ち着け、俺。落ち着くんだ。

「…あ、星…くん」

気配に気付いて振り返った先輩と視線がばっちり合う。
咄嗟に声が出せない。
静かな部屋に甲高い喘ぎ声だけが響いていた。

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