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忘れられる、キスを
第53章 ふたりぐらし
「も……いっかい…」
「え?」
「あ、あ、あと、いっかいだけ…」

シたい。

心臓の音が大きく聞こえる。
散々やって、本当は身体はもうかなり辛いのに、それでもまだ、と求める私に星くんは呆れてしまうだろうか。
怖くて、顔が見られない。

「…まだ、いいの?」

星くんが優しく肩を抱いて起こしてくれる。
じっとこちらを見つめる目には不安と期待が交互に現れる。

「ん、まだ、シたい」

星くんの表情がぱっと明るくなった。
ぎゅうっときつく抱き締められる。

「絵津子さんが、シたい、って言ってくれるなんて…」

エッチに積極的な絵津子さん、好き、と耳元で囁かれて、そのまま耳朶をかぷりと噛まれた。
恥ずかしさと気持ちよさで身体が震える。

「次は、どうしたい?」

絵津子さんの好きなことシよ、と星くんが屈託なく笑う。
好きな…と言われて、でも、何て言えば良いのか分からない。
私が好きなのは…

「こ、このまま…」
「え?」
「この、まま、ぎゅって…した、まま……」

お腹の下辺りに熱を感じる。
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